8月になると思い出す、あのもう一台の英国車
8月になると思い出す車があります。
それは、ウチに昔いたもう一台の英国車――モーリスマイナー1000です。
ミニの陰に隠れがちな存在かもしれませんが、あの独特の丸っこいボディと、どこか気の抜けたようなフロントフェイス。ミニより少しのんびりしていて、でもしっかり個性のある車でした。今思えば、「古き良きイギリスの風」がそのまま鉄の塊になったような存在だったかもしれません。
ウチに来たのは、たしか6年前の夏。三浦半島までドライブに行ったはずが、ひょんなことからモーリスマイナーに出会い、「欲しい!」となったのが始まり。後日思わず電話してしまったのです。
購入当時は、ガレージでボディを磨く毎日。イギリスから取り寄せた雑誌を見てはあ~したい、こ~したい!と夢が膨らみ頭の中はこの車のことでイッパイ。
エアコンなんてもちろん付いていないから、夏の雨の日のドライブは大変。でも、長野のミニピクニックに行った時は、窓を全開にして本当に気持ちよかった。風の音も、エンジンの唸りも、全部が「生きてる」って感じがしたものです。
その後、泣く泣く手放すことになったのですが、今でも8月の空を見上げると、ふいに思い出すことがあります。あの鈍く光るボディ、重たいドア、クラッチの感触。今の車にはない「ひとクセ」が、逆に愛おしかった。
モーリスマイナー1000は、今どきの車のような快適さも、スピードも、便利さも持っていません。でも、「車と過ごす時間」そのものの豊かさを、あの車は教えてくれたような気がします。
夏の終わりに近づくと、ふと車庫の奥からあの子がひょっこり顔を出しそうな気さえしてしまうのです。
あの夏、あの車――8月になると思い出す、もうひとつの家族のような存在です。
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